3月3日、ひな祭り。日本では古来よりこの日に女の子が健やかに成長することを祈り、各家庭でひな壇を飾る。というのが全国で一般的なわけだが、実は地域によってはまた異なる風習が存在するのをご存知だろうか。例えば、福岡県柳川市。かの地では、ひな祭りの時期になると、街のあちらこちらで、さげもんと呼ばれる吊るし飾りを見ることができる。そこで本日(2月13日)は福岡県柳川市で開催されている、さげもんめぐりという催しを体験すべく柳川藩主立花邸 御花までおじゃました。

さげもん、とは何ぞやという方のために説明すると……さげもんとは、古くは着物の残り布を、子どものおもちゃや琴爪入れにリメイクしたのがはじまりとされる、福岡県柳川市に伝わる吊り下げ飾りのこと。しだいにそれを天井から吊り下げて楽しむようになり、今では女の子の初節句に健やかな成長を願い、ひな壇の両側にさげもんを吊り下げるのが柳川市でのひな祭の定番スタイルとなっている。
また、さげもんにはいくつかのきまりがあり、ひとつは1列7つの飾りを輪になるよう繋げてそれを7段、そして中央に2つの鞠を吊り下げて、合計51つの飾りで構成するというもの。これには人生50年とされた時代に、大切な子どもが1年でも長く生きられるようにという願いが込められている。まさに親心だ。

さて、そろそろ御花の中へ。廊下にもずらりとさげもんが飾られているわけだが、ひときわ目を引くのはやはりひな壇がある板間であろう。ひな壇の両脇だけでなく、色鮮やかなさげもんが部屋全体に飾られている様子に、自然とシャッターに指がかかる。どの角度から撮っても、寄っても、引いても絵になる。

御花、というのは柳川藩主の末裔が営む日本で唯一の泊まれる国指定名勝で、柳川市、いいや福岡県内でも屈指の名所のひとつ。数百年にわたり脈々と受け継がれてきたこの文化、歴史を感じられる空間と、さげもんのコラボ。うん。確かにこれは一見の価値がある。さげもんめぐり、は2月11日から4月3日まで開催されているので、まだ見たことがないという方はぜひ一度訪れてみてほしい。

とくに今年は特別で、御花では2月8日から25日にかけて、デンマークを代表する北欧家具ブランド「FRITZ HANSEN」とのコラボイベント、FRITZ HANSENのクラフツマンシップをテーマにした「FRITZ HANSEN EXHIBITION in 御花」を開催中なのだ。日本の歴史的建築と地方文化、そして北欧デザインの世界観の融合を見られるのは今だけ。この貴重な機会に立ち会えたことには感激しかない。
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筆者:堀本 一徳(FCP 編集長)
撮影:スタジオタカノ





