日本には東北から沖縄まで、全国各地にその土地の気候や土壌を生かしたさまざまなお茶が存在しているわけだが、やはり自分が暮らす土地のお茶が一番うまい!と思うのは私だけではなかろう。たとえば私が今、暮らす福岡県において、お茶といえば八女茶。1191年に宋から禅師により渡ってきた茶の木が起源とされる。中でも八女茶の玉露はその濃厚な味わいが特徴で、最高級品ともなると1キロ数万円、最高峰の品評会で評価されたものともなると100グラム数万円で取引されるほど全国で、そして世界でも高く評価されている逸品だ。

さて、余談はこれくらいにして、今回なぜ日本茶、それも八女茶について触れたのかというと、先日訪れた八女市星野村にある茶の文化館でお茶の新たな飲み方と出会ったからである。それが、しずく茶。玉露を究極に美味しく楽しむために考案された飲み方で、まず茶こしがないふた付きの茶碗を使う。そこに、ぬるめの湯をゆっくりと注ぎ、しばしまつ。そして、ふたのすき間からすするように少しずついただく。すると、舌の上に甘露のような濃厚な甘味が広がり、鼻腔を若葉のような芳醇な香りが抜けていく。そして二煎、三煎と淹れるほど風合いが変化していくのが面白い。

さらに、茶碗に残された茶葉をおひたしのように、最後にポン酢をかけて食べるというのだ。これがまた高価な茶葉だからもったいないだとか、美容にいい成分があるからだとか、そういう理屈は抜きにしてただただうまいのだから驚かされる。

それと、お茶の横でそっと寄り添ってくれる茶菓子がまたいい。聞くところによると、開館当時から活動されている地元のご婦人グループがおもてなしの心で手作りされているもので、その日によって種類が変わるのだとか。しずく茶をいただきつつ、合間に茶菓子をひと口。何と贅沢なひとときであろうか。これだけでも茶の文化館を訪れた価値があったと思わせてくれる。

ちなみに、これはあくまで”ちなみに”だが、豊かな自然に配慮した流線型の建物を外から見ると、太宰府市にある九州国立博物館とそっくりなつくりをしているのだが、実は茶の文化館の方が先に建てられたもの、というのはここだけの話だ。
【外部リンク】茶の文化館のInstagram公式アカウントはこちら
執筆:堀本一徳(FCP編集長)



