福岡県筑後市に“野菜”のキャラクターを可愛くほっこり描くイラストレーターがいるのをご存じだろうか。今回は野菜とアートをかけ合わせて、子どもたちに元気を届ける“ほっこりお裾分けアーティスト”のだぎりさんに、絵を描くようになったきっかけや現在開催中(2025年7月21日〜8月2日)のイベント『はっぴーべじたぶる愉快な仲間達〜食育とアートと地域〜in筑後』の見どころ、今後の展望などを伺った。

心と体の不調から気づけた野菜への感謝
– どのような経緯でイラストレーターになったのですか?
のだぎりさん:もともと絵とかにはそれほど興味はありませんでした。絵の学校に通ったこともないですし。高等専門学校を5年で中退し、新聞社が募集していたイラストの懸賞を⾒かけまして、応募してみたら社⻑賞に選ばれ、全国出版までさせていただいたんです。それがきっかけで、シャター通りになっていく商店街をなんとか元気にできないか、と福岡県久留⽶市の商店街で路上アートをするようになりました。2年くらいそうして活動したあと、はじめて就職したのが福祉施設です。
– 施設で働きながら活動するのは大変だったのでは?
のだぎりさん:そうですね。介護は腰を曲げる仕事が多くて、腰を痛めてしまい、介護をつづけることに限界を感じて辞めました。そのあと腰をあまり使わない仕事を選びサラリーマンをしていたのですが、知らず知らずのうちに、体も⼼も無理していたのかな。30 歳くらいのとき急に体調を崩して、⽿も悪くなって……働けなくなりました。当時は焦りましたよ。今の⼈たちと感覚はズレてるかもしれないですけれど、男性として社会で働けなくなってしまった状況にものすごく劣等感があったのを今も覚えています。それで療養中にも何かできないかと、野菜を作るようになりました。
のだぎりさん
– 野菜作りがきっかけで野菜を題材にするようになったわけですね。
のだぎりさん:はい。野菜っていそがせても育たないですよね。でも、ゆっくりと着実に成長してくれる。そして季節を過ぎると枯れていく。そうした姿を見ているうち、私という人間もあくまで自然界の一部で、焦らず自然のリズムに合わせればいいのではないか、と思うようになったんです。すると気持ちがスッとラクになって、しだいに体も元気になっていきました。
この野菜たちからもらった感動といいますか、気づきを周りにも伝えていきたいな、というところから野菜を題材に絵を描くようになったわけです。
– 今は食育にも取り組まれているとお聞きしました。
のだぎりさん:せっかくイラストレーターとして活動するなら社会に役⽴つようなことをしたいなと。そこで、野菜たちに助けられた⾃分にできることは何かを考えて、農家さんたちを応援する活動をはじめました。そのひとつが保育園、⼩学校でのアート教室やお野菜をモチーフにしたワークショップ、僕のお野菜キャラの塗り絵、収穫体験などです。次の時代を担う⼦どもたちに、野菜に興味をもってもらい、野菜を⾷べて、元気に育ってほしい。そのことが結果的に日本の農家さんたちを応援することにつながっていくとうれしいな、との想いで活動しています。

地元・筑後市に恩返しのために初の大規模開催
– 今回のようなイベントはこれまでもされてきましたか?
のだぎりさん:これまでも5〜6回していますが、この規模ははじめてです。『はっぴーべじたぶる愉快な仲間達』というメインタイトルはだいたい同じで、今回はそこに食育と地域とアートを組み合わせました。地域をつけたのは、地元・筑後市に恩返ししたいなという想いからです。展示物のなかには私の作品だけでなく、筑後市の小学生たちと作ったお野菜トランプがあったり、自治体や企業と一緒に作った作品があったりしますので、そうした筑後の人たちとの作品もぜひ見にきてください。
– ワークショップや投票企画などもされているそうですね?
のだぎりさん:ワークショップとしてはお野菜キャラクターお面作りやお野菜キャラクター塗り絵、お野菜季節巡りすごろく、箱の中身(野菜)を当てるゲームなどをしています。普段、子どもたちって調理された野菜しか知らないじゃないですか。例えば、葉っぱがついたまま、泥がまだ残ったままのにんじんを触ってみて「こんな形をしているんだ」とか、目をつぶって嗅いでみて「こんな匂いがするんだ」とか、今の子どもたちに体験してみてほしいですね。
あと、これまで私が描いてきた、野菜のキャラクターたちの選抜選挙みたいなのもしています。(笑)絵の横には私が考えたキャラクターそれぞれの特徴とかも書いていますので、それも読みながら気に入った子に投票してみてください。投票数が一番多かったキャラクターは4コマ漫画に登場させようかなと思っていますよ。

日本中に届けたい”野菜×アート“のやさしいムーブメント
– 最後に、将来の展望についても教えていただけますか。
のだぎりさん:今描いている4コマ漫画のお野菜キャラクターたちが全国や世界でも知られるようになり、多くの人々を癒して野菜や食べ物をヒーローのように感じていただけるようになっていくとうれしいです。
また、同じ規模でできるかはわからないですが今後、ほかの市町村でもイベントは展開していって、私がやっている活動を⽇本中に広げていきたい。これまでたくさんの方々や地域の皆さまにとてもお世話になってきました。これから私が、そして私の描くキャラクターたちがもっと多くの方に知られるようになり、それこそひとつのブランドのようになっていければ、お世話になった⽅たちへの恩返しになるのかなと思います。「あの⼈、俺の知り合いなんだよね」「あのときお世話したんだよね」と応援してくださった方々が誇らしく思っていただけるようになることが一番の幸せです。
【取材対象者情報】
| 業種 | 芸術 |
| 事業所名 | のだぎり |
| 担当者名 | 野田 隼人 |
| 所在地 | 福岡県筑後市 |
| サイト | https://nodagiri.jp/ |
| SNS | Instagram(@nodagiri9) |










