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水道

流した水のその後を知りたくて|下水道展 矢部川浄化センター|福岡県みやま市

先日(2025年10月5日)、福岡県みやま市の矢部川浄化センターで年に1度の下水道展が開催されている、という情報を耳にしたので立ち寄ってきた。会場に着いてみると、入り口では飲み物が配られ、射的や輪投げ、くじ引きなどの催しがすべて無料で楽しめるというではないか。大盤振る舞いすぎやしないだろうか。それもあってか、会場内は親子連れでそうとうに賑わっていた。

それを横目にひとりでぶらつく、私。いや、そのようなことはいいのだ。本日の一番の目的は、この施設の心臓部である処理場の見学なのだから。ここ矢部川浄化センターは八女市、筑後市、みやま市、広川町の3市1町の広大な範囲から集まる下水、いわゆる流域下水道を管理する一大処理場である。これほどの範囲をカバーする施設。さぞかし機械的で、化学薬品を多用したものなのだろう、と勝手に想像していたのだが、説明を聞いているとどうやら違う。

下水管から流れてきた下水は、まず巨大なふるいによって大きなゴミが取り除かれる。次に最初沈殿池で重い汚れを沈殿させ、その上澄が反応タンクへと送られる。ここでは活性汚泥に含まれる微生物たちに汚れを食べさせて、分解させ、つづく最終沈殿池で活性汚泥ときれいになった水を分離する。最後に砂ろ過施設を通って、紫外線消毒装置で消毒したのち川に放流される。

ちなみに、この活性汚泥に含まれる微生物というのは何も特別なものではなく、一般的な河川にも当たり前に存在するものだという。そう、ここでは実に自然の力を巧みに利用して下水を処理しているのだ。さらに、処理過程で出てくる汚泥はどうなるかというと、脱水して建設資材の原料や農作物の堆肥として再利用されるのだとか。どこまで環境に配慮したクリーンな仕組みなのだ、と脱帽する。

さて、すこし話はそれるが、皆さまはご存じだろうか。今、世界では何人の人が水不足で苦しみ、不衛生な環境で用を足しているのか。ユニセフによると、世界の21億人以上が安全に管理された水を飲めず、3億5,000人以上がトイレのない屋外で用を足しているという。(出典:Unicef「2000年から2024年までの家庭飲料水、衛生設備、衛生習慣の進捗状況」)SDGsで掲げる17のターゲットのひとつに、「6. 安全な水とトイレを世界中に」とある。だれもが安全な水とトイレを利用できるようにしよう、というものであるわけだが、世界の多くの国と地域ではまだまだ実現できていない現状があるわけだ。

当たり前に蛇口からきれいな水が出てきて、水洗トイレが使える。この日本という国が、いかに恵まれているということか。その”当たり前”が、今日見学したような処理場と、そこで働く人々によって日夜支えられているということを、忘れてはいけない。そして、今後もこの”当たり前”を守るために、私たち一人ひとりに何かできることはあるのかも考えていきたいものだ。食事の食べ残しや油をそのままキッチンに流さない。洗剤や薬品を必要以上に使わない。そうした小さな心がけ一つひとつが処理場の負担を減らし、未来のきれいな水環境につながっていくはずなのだから。

さて、帰りがけにアンケートを書いたところ、お菓子と、きれいな花の苗までもらってしまった。来年は私も、家族を連れてこよう。

執筆:堀本一徳(FCP編集長)

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