全国的に農業従事者数の減少がいちじるしいなかで、新規参入者数は平成27年の3,540人から令和5年の3,830人とおおむね横ばいを推移している。(出典:農林水産省「令和5年新規就農者調査結果」)このような状況のなか、農業に可能性を求めて新規参入をする方々がいる。青パパイヤが地域の耕作放棄地の解決策のひとつとなり、さらには地域の活性化につながることを信じて挑戦する古賀萬壽果園の古賀さんもそのひとりだ。今回は、古賀さんに青パパイヤのもつ可能性と将来の夢について伺った。

古賀さん
エンジニアから農業への挑戦
– 青パパイヤを栽培することになった経緯を教えてください
古賀さん:私は長いあいだ、半導体のエンジニアとして県外で働いていましたが、親が倒れたのを機に地元に戻りました。今は、営業や人事など総務系の仕事をしながら、農業をしています。まったく経験がなかったのですが、農業をしている元義父がレンタル農園の事業をはじめた際に、私もかかわるようになったのがきっかけです。青パパイヤはレンタル農園の宣伝になるかと思い、このあたりでは珍しく、目玉になるものとして栽培しはじめました。ちなみに、パパイヤは青いものは野菜で、そこからさらに黄色く熟したものはフルーツとして食します。
– パパイヤの栽培で難しかったことはありますか?
古賀さん:はじめてパパイヤを植えた年は、大きく育ったものの実が一個もなりませんでした……。そのことが、成功するまで追求するという私のエンジニア魂に火をつけまして、栽培方法を研究するように。その結果、私でも栽培できる!と確信をもつことができ、パパイヤ農園を作ることにしました。ただ、販路がまだないなか200本ほど植えたところ、実が何百個とできてしまい、近所の方に配っても残ってしまうくらいでした。(笑)このように順調だったのですが、パパイヤがあまりにも土の栄養を吸い取るようでして、牛糞と鶏糞をしっかり与えても連作障害のようになることがあるのが課題のひとつです。

美味しいだけではない青パパイヤの魅力と可能性
– パパイヤの栽培は南国でなくてもできるんですね
古賀さん:そうです。沖縄や鹿児島のような暖かい地域だけでなく、福岡でも作れます。植えてからはじめは手間がかかりますが、そのあとはいくつかのポイントを押さえておけば害虫もつきにくく、害獣にも食べられにくいのでほとんど放置していても大丈夫です。特別な土が必要ということもなく、普通の土に牛糞や鶏糞などの栄養をたっぷり与えればどこでも栽培できます。
このあたりでも耕作放棄地がたくさんあるので、そういった土地を活用してパパイヤ栽培をすれば地域の活性化にもつながるのではと思います。もしパパイヤの栽培を広めていければ、ゆくゆくは福岡県の特産品になるかもしれませんよ。将来的には作り方も広めていき、パパイヤで地元を元気にしていきたいです。
– 青パパイヤのおすすめの食べ方を教えてください
古賀さん:サラダ、きんぴら、チャンプルー、カレーなどといろいろな料理に使えます。青パパイヤには酵素、ビタミンC、ポリフェノール、食物繊維が豊富に含まれていますし、そのうえ低カロリー。酵素の量はパイナップルの約6倍で、とくにパパイン酵素はすべてのタンパク質を分解できるほど強力なものです。ただ酵素は熱に弱いため、加熱すると死んでしまいます。ですから、パパイン酵素をじゅうぶんに取り入れるためにはサラダやスムージーのように生で食べていただくのがおすすめです。

失敗を恐れず思いついたらすぐ行動
– 今後の課題を教えていただけますか
古賀さん:青パパイヤはまだ日本では知られていない食材で、一般に流通していないのが大きな課題でしょう。今はネット販売に加えて、アジア系の料理店やエスニックな食材を扱う店などとも契約していき、少しずつ販路を拡大しているところです。また、収穫時期以外にも販売できるよう、加工品作りにも挑戦しています。ただ、酵素ドリンクを作ってみたのですが、販路の問題で販売まではできていない状況です。
また、最近ではパパイヤは乾燥させても酵素が残ることがわかりましたので、乾燥パパイヤを商品化できないかと考えています。今はまだ個人事業なので、自分でやるしかない。悩んでいる時間はありませんので、思いついたらすぐに行動しています。これまでたくさん失敗してきましたが、それら失敗も学びに変えて、少しづつ前進しているところです。

夢は宇宙食の開発
– 最後に、古賀さんの将来の夢を教えてください
古賀さん:パパイヤの栽培方法を調べているときにフィンガーライムというこれまた日本では珍しい柑橘類に出会いまして、今はフィンガーライムの栽培もしています。今後は、そのフィンガーライムの加工にも挑戦していきたいです。すでにアイスやビン詰めなどには取り組みはじめています。ただ、冷凍や真空パックなどのアイデアはいろいろとあるのですが、まだ加工する場所がないのでできることが限られている状況です。そこで、近いうちにレンタルキッチンを借りようと思っています。
私の最終的な夢は宇宙食を開発することです。日本食の宇宙食は50種類ほどと少ないうえに、デザートとなるとさらにその種類は限られます。。宇宙飛行士の方々は、宇宙という過酷な状況で日々、世界の発展のために研究されているわけですから、食事の時間くらい美味しいデザートでちょっとひと息ついていただきたいなと。そのためにフィンガーライムでデザートの宇宙食を作りたいなと思っています。ただ、宇宙食は宇宙飛行士の方たちが自分で選ばれるそうなので、宇宙飛行士に選ばれる魅力的なものを作ることが目標です。
【取材対象者情報】
| 業種 | 農業 |
| 事業所名 | 古賀萬壽果園 |
| 担当者名 | 古賀 隆一 |
| 所在地 | 福岡県八女郡広川町日吉1164-6 |
| サイト | https://www.fukuoka-papaya.com/home/ |








