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農業

収穫の喜びをお客さまと分かち合う果樹園経営|ピーチの森|福岡県広川町

基幹的農業従事者の82.3%が65歳以上。(出典:農林水産省 令和5年「農業労働力に関する統計」)このように高齢化が進行する農業では、同時に後継者不足が深刻化している。一方、最近は新たな農業のかたちを模索する動きが各地ではじまっているのをご存じだろうか。今回は、福岡県広川町で桃の木のオーナー制度やぶどう狩りを提供し、お客さまに収穫を担ってもらうことで、限られた人手でも上手に果樹園を運営しているピーチの森の古賀さんに、これまでの経緯や今後の展望について伺った。

(左) 古賀さん (右) 氷室町長

収穫期の異なる果樹を育てて、年間通して出荷する

– 貴園の成り立ちと主な生産果樹を教えてください。

古賀さん:40年近く前、父が桃を生産するようになったのがはじまりでした。それから少しずつ規模を拡大していき、今では桃のほか、ぶどうやびわも栽培しています。

父の代では農協に出荷する一般的な果樹園でした。それが7年ほど前、私が受け継いだタイミングで、桃の木のオーナー制度をはじめたんです。それに合わせて名前を現在の「ピーチの森」にしました。ただ私、桃アレルギーなんです。(笑)食べられなくて……。だから今は桃を減らしていて、ぶどうがどんどん増えてきています。

– 桃のほかに育てているのは年間通して出荷するためですか?

古賀さん:その通りです。びわがだいたい3月の終わりから、桃は6月中旬、ぶどうは9月中旬からが収穫期で、冬場を除いておよそ毎月何かしら収穫しています。

果樹園を一般開放することで、収穫の負担を軽減

– では、今(2024年9月10日取材)はぶどうの時期ですね。

古賀さん:はい。私たちの果樹園では主にぶどう狩り(シャインマスカット)として栽培しています。9月中旬からなくなりしだい終了というかたちで、例年10月の第1週目くらいには終わってしまいますね。とくに初日は誰にも手をつけられていないまっさらな状態ですから人気で、1日500人くらい来場されます。

今年は広川町のかすり祭りとも連携していまして、町のホームページやチラシにも載せていただきましたので、さらに来場者は増えるのではないでしょうか。どうしても後半になるとぶどうの数は限られてきますので、ご興味がおありでしたらぜひお早めにいらしてください。

– ぶどう狩りを提供するにあたり、こだわりはありますか?

古賀さん:ぶどうは粒が大きくなるよう育てています。あとで手に取ってみてください。びっくりされると思います。(笑)あと、しっかりと熟れるまで出さないので、ほんとうに甘くて美味しいですよ。

– 桃でも面白い取り組みをされているとお聞きしました。

古賀さん:桃は木のオーナー制度をしています。普段のお世話は私たちがして、収穫だけオーナーさんに来ていただくというものです。木によりますが、1本100玉くらい取れることもあります。

あと、桃の花が咲く3月ごろには果樹園を無料開放しています。こちらは誰でも入園いただけて、シートを広げてお弁当を食べたり、節度を守っていただければお酒を楽しんでいただいたりしても大丈夫です。桃の花は桜とはまた違った可愛らしさがありますからぜひ一度、見にいらしてください。

– これだけの規模ですと、管理するのは大変そうですね。

古賀さん:今は家族4人と姉の5人で管理しています。この規模の農園として人手は足りていませんね。ただ、それぞれ収穫期はずれていますし、今は外部へはスイーツ系のお店や直売所くらいにしか出荷していません。

また、ぶどう狩りや桃の木のオーナー制度のおかげで、来場者やオーナーさんが収穫を担ってくださいます。これなら限られた人手でも運営できますし、それにロスが少ないのもいいですね。桃なら落ちて多少傷ついたものでも、もったいない精神でオーナーさんが引き取ってくださいます。大切に育てたものを全部美味しく食べていただける、これほど果樹農家として嬉しいことはありません。

無理をしないからこそ、より良いものを提供できる

– 果樹園としての今後の展望を教えてください。

古賀さん:父の代からなので設備はずいぶんと古くなってきました。そろそろ修繕や建て替えが必要なハウスもあります。ただ、今の体制を考えますと、無理して規模を維持する必要はないのかなと。むしろ今の人手で管理しやすい規模にまで縮小した方が、お客さまにはより良いものを提供できるのではと考えています。

それと今回の広川町のかすり祭りのように、今後は地域のイベントとも積極的に連携して、より地元に根ざした経営をしていきたいですね。

– 広川町長としてこうした果樹園さんの声を聞いてどうですか?

氷室町長:広川町は耕地面積の小さな地域で、昔から限られた土地でいかに収益を上げるのか、いわゆる高収益型農業を追求してきました。だからこそ花ですとか、果物が盛んに栽培されているわけです。また、今は合併しましたが、農協が広川単体であった時代では、広川町の果物の価値を上げるために先人たちはときに広島、東京まで販路拡大に出かけたと聞いております。

まさに先人の努力あっての今の広川町なわけです。そうしてできた広川のかたちを大切にしつつも、新しい農業を模索する方々の後押しもしていく必要があると考えます。そうしてここ広川を町一丸となって盛り上げていきたいですね。

【取材対象者情報】

業種農業
事業所名ピーチの森
担当者名古賀 雄樹
所在地〒834-0123
福岡県八女郡広川町藤田968
連絡先0942-52-7045
SNShttps://www.instagram.com/pitiko2018/

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