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林業

原木の流通拠点・共販所から見えてくる地域の森林組合のありかた|福岡県八女森林組合|福岡県八女市

国産材原木流通の拠点である共販所。原木市場とも呼ばれる原木の流通機関は、その多くが産地のほど近くにあり、全国400〜500か所設置されている。(出典:森林・林業学習館「木材の流通経路」)原木の集荷や仕分け、競りにとどまらず、その役割は公正な価格形成にまでおよぶという。そして、全国の共販所の多くを管理しているのが各地域の森林組合だ。今回は、福岡県八女森林組合の樋口組合長と樋口参事に、共販所を中心とした組合のありかた、林業をとりまく課題について伺った。

(左)組合長 樋口良夫さん (右)参事 樋口亘善さん

林業の最前線から環境全体の未来を想像する

– 福岡県八女森林組合の主な役割を教えていただけますか?

樋口組合長:私たち福岡県八女森林組合の主な役割としては、組合員である林業家たちの取りまとめと、県や市など行政との連携があげられます。行政からおりてくる施策に対して、ほかの事業体と協力したり、あるいは組合独特の事業として導入したりするわけです。そうして、ここ八女地域の森林をどう活用していくのか、どう残していくかということについて、私たち組合が最前線に立って考えております。

– ほかの事業体との協力というと、どのような取り組みがありますか?

樋口組合長:私たち組合では材木店や建設会社などの林業に関わる事業体だけでなく、そのほかの業界との協力も必要だと考えております。雨が降り、山に染み込み、湧水となって川から海へと流れていく。山というのはすべての生命の始まりなわけです。その山をどう守っていくのか、これは林業界だけの問題ではありません。

ひとつ例として、私たちは福岡有明海漁業協同組合連合会や矢部川漁業協同組合など漁業に関わる事業体との協業関係を結んでおります。それぞれの事業体に山を確保していただいて、そちらを福岡県八女森林組合が管理し、山の機能を維持していくというかたちで連携しながら森林の、ひいては海の環境保全に努めているのです。

山林経営を足元から支える原木流通の拠点・共販所

– 福岡県八女森林組合では共販所も経営されていますよね?

樋口組合長:その通りです。もうひとつ、組合の大切な役割としては、原木価格の調整があるでしょう。原木価格が乱高下するような状況では、地域の林業家たちが安心して山林を管理できません。そこで、私たち福岡県八女森林組合では、独自に共販所、いわゆる原木の市場を経営しています。八女各地の林業家たちからお預かりした原木をここに集めて、県内外から入札に来ていただく。そうして市場のニーズに応えることで、原木の価格を安定させられると考えています。

– 原木の取引というのはどのような流れなのでしょう?

樋口組合長:市場は月に2回開いていまして、1回あたり2,000〜2,500立方メートル、年間で約60,000立方メートルの流通量があります。そうして競り落とされた原木は、主に九州全域へと出荷されていくわけです。原木の競りも、魚市場のそれと根本は同じで、その原木を欲しい人が札に「これはいくら」と書いていき、最終的に高値をつけた方が競り落とす、という流れとなっております。市場が開かれる日は、八女全域から原木が集まってきて壮観ですのでぜひ一度、見にいらしてください。

林業界の現状を知ることが 課題解決の第一歩

– ほかの業界と同様に、林業界でも後継者不足は課題ですか?

樋口組合長:はい。福岡県八女森林組合の事業活動の一翼を担っていただいている林業の一人親方組合・八女林業組合を立ち上げたとき、140名ほどいた組合員たちも、20年経った今では半分にまで減少しました。原因はさまざま考えられますが、ひとつは高齢化でしょう。とくに個人の林業家が高齢化し、後継となる人材もいなくて廃業する事例があとを断ちません。林業家や代々受け継いできた組合員の所有林を組合が積極的に買い、伐採して、新たに植林する、ということをしてはいますが、私たちだけでは限界があります。

そこで今後、林業家たちが小規模でも持続していくにはどうすればいいのか、その環境づくりを考えているところです。同時に、現場の声を行政まで伝えて、新たな施策として打ち出してもらえるようにする必要もあるでしょう。そして何より、一般の方に、私たち林業界の現状を知っていただきたいです。林業界について普段、直接目にすることはないかもしれませんが環境保護、災害対策という視点で山は皆様と決して無関係ではありませんから。もちろん、林業界について知っていただいて、その先に「働いてみたい!」という若者が出てきてくれたらなお嬉しいですよね。

– 組合として何か若手雇用の取り組みはされていますか?

樋口組合長:自然相手ですから、危険な作業は確かにございます。ただ、私たち組合は安全に作業していだだけるよう講習会をはじめさまざまな取り組みをしていますし、国の施策である緑の雇用で給与をもらいながら学べる機会もあります。安全面でも、給与面でもしっかりと環境が整えられてきているわけです。そのおかげもあってか、福岡県八女森林組合では30代の若手メンバーが増えてきました。

– 最後に、山で働く魅力、について教えてください。

樋口組合長:林業はとくに成果が目に見えやすい業界です。それは、自分たちが「この地域を担っているんだ」「地域に貢献しているんだ」という誇りと自信へとつながります。それに、何だかんだいっても、山はいいものですよ。力いっぱい仕事して、おいしいお弁当を食べて、大自然のなかで昼寝をする。この心地よさは山でしか味わえません。もし林業にご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひ門を叩いてみてほしいなと思います。

【取材対象者情報】

業種林業
事業所名福岡県八女森林組合
担当者名代表理事組合長 樋口 良夫
所在地〒834-0012
福岡県八女市山内1060-3
連絡先0943-23-2112
営業時間8:15~17:00
定休日日祝日・第2、4土曜・盆・年末年始
サイトhttps://jfyame.or.jp/

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