“掃除“を日々の業務に取り入れている企業がどれほどあるだろうか。ここ福岡県筑後市には掃除によって細かなところにも目が行き届くようになったことで、10年間にわたり大きな事故ゼロを実現している企業がある。今回は、リーダー自らが動く姿勢で社内に掃除の文化を根付かせた九州木材工業株式会社の角さんに、掃除に取り組むようになったきっかけやその効果、掃除大賞に2度も選ばれた経緯などを伺った。

代表取締役社長 角さん
ある1冊の本との出会いからはじまった
– どうして掃除に取り組むことにされたのですか?
角さん:長野県に”かんてんぱぱ(伊那食品工業株式会社)”で知られる寒天を研究、製造している会社があります。そこで当時会長をされていた塚越さんという方が書かれた『年輪経営』という本に出会ったのがきっかけです。
タイトルに『年輪』とあるものですから、(かんてんぱぱ、という会社のことを)はじめはてっきり木材関係の人かな、と思ったら寒天の会社か!って。でも、よくよく読むと塚越さんは高校を卒業してまず製材所に勤められて、そこからかんてんぱぱに転職され、社長に、会長になられたすごい方なわけですよ。
で、本の中で”かんてんぱぱガーデン(食生活や寒天について楽しく学べる施設)”が登場しまして、そこでは年間300から400もの商品が開発されるというじゃないですか。この会社何者?と興味がわきまして、知り合いづてにご連絡したところ「いつでも来てください」とおっしゃってくださったので社員とともに行きました。
– かんてんぱぱガーデンでの体験が掃除につながるわけですね?
角さま:その通りです。東京ドーム10個分ほどの広さに工場や研究室、レストランなどいろいろな建物がありまして、周囲は緑豊かな環境で、それなのにゴミが1つもない。何より社員皆さまの顔を見たら幸せそうにされているわけですよ。
どういうこと!と秘訣をお聞きしたら「1番は掃除です。環境整備は物言わぬ営業なんですよ」って。私、感動しました。これだ!って。それから日本そうじ協会の門を叩き、勉強させていただき、業務に掃除を取り入れたのが2015年のことです。

事故ゼロという数字から見える掃除の力
– 当時の社員の皆さまの反応はどうでしたか?
角さま:「社長が変なことやりはじめた」「また余計なことしだしたな」みたいに思われていたのではないでしょうかね。(笑)“掃除”って仕事という感覚がない。だから社員たちに浸透しない。もう私からやるしかないな、と。私も3年間毎日トイレ掃除しました。社長が掃除していたら、社員もやらざるをえないじゃないですか。そうこうしているうち、少しずつですが社員の意識が変わっていきました。
– 掃除をはじめて事業にも何か影響はありましたか?
角さま:目に見えて事故がなくなりました。掃除をはじめてこの10年間、ちょっとした打撲が1件ありましたが、大きな事故は起きていません。弊社では社員誰しも自由に会社の改善提案できるようにしているのですが、掃除をはじめてから一気に900件もでてきました。本社の社員50名で900件ですよ。事務局だけではさばけない。(笑)それだけヒヤリハットが隠れていた。掃除をすることで細かなところにも目がいくようになって、気づくことができるようになったというわけです。
– そうして掃除大賞を受賞されるまでになったわけですね。
角さま:1度目は2017年。掃除をはじめて2年目のことでした。実は、弊社から応募したわけじゃなかったんですよ。日本そうじ協会の方から「応募してくれませんか」と打診されまして、勉強にもなるからいいか、とエントリーしてみたら掃除大賞とリーダシップ賞の2つに選んでいただきました。最終選考の前、社員にプレゼンを聞いてもらって、盛大に送り出してもらったのは今でも覚えています。それから2回目が5年前のことで、掃除大賞と文部科学大臣賞をいただきました。

リーダーシップとは言葉よりも行動で示すこと
– 何かを成すにはリーダーから動くことが大切ということですね。
角さま:やはり言葉で伝えようとするよりも、見せた方が圧倒的に早いわけですよ。掃除って新人でも、ベタランでも、男性でも、女性でも、それこそ社長も関係なく同じことができます。知識も、技術も必要ない。そして、成果がすぐ見えるのもいいじゃないですか。人というのは成果が見えたらやる気が出ます。
“掃除”というちょっとしたことかもしれませんが、実は仕事においてとても大切なことなのだと、今では社員皆が理解してくれて、一生懸命に掃除してくれています。掃除に社員皆で取り組み、気持ちのいい環境を維持していく、それは弊社の誇りです。
【取材対象者情報】
| 業種 | 木材加工業 |
| 事業所名 | 九州木材工業株式会社 |
| 担当者名 | 代表取締役社長 角 博 |
| 所在地 | 〒833-0041 福岡県筑後市大字和泉309-1 |
| 連絡先 | 0942-53-2174 |
| サイト | https://www.kyumoku.co.jp/ |
| SNS | YouTube(九木チャンネル) |







